今年のあいちアール・ブリュット障害者アーツ展では、9月23日、24日の2日間にわたり、「さまざまな表現活動から見えるコミュニケーションの世界」と題して、トークイベントを開催しました。
23日のゲストスピーカーは、美術家の中津川浩章さんとNPO法人ポパイの山口未樹さん。
中津川さんからは、障害のある人の表現には、心揺さぶるものがある。なかには、長年、ゴミとして捨て続けられてきたものもあり、それを「アート」と呼べるかは分からないが、人間の存在の証明そのものと感じるといったお話がありました。
また、障害のある人のアート活動は、福祉の現場で行われているものが多いが、福祉の現場の基盤は、本人と支援員の関係性であり、アートにおいてもそれは同様との問題提起もいただき、「いい作品が生まれる事業所は、よい支援をしている」とのご指摘は、とても示唆に富むものでした。
山口さんからは、失敗談も含め、NPO法人ポパイの取組をご紹介いただきながら、障害のある人と支援者の線引きをあいまいにするものがアートではないか、とのご指摘をいただきました。
その後は、愛知アート・コレクティブの鈴木敏春さんの進行により、今回の「あいちアール・ブリュット展」の具体的な展示作品も例に挙げながら、議論を深めました。
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24日は、「あいちアール・ブリュット美術館」に出展いただいている山本良比古さんと支援者の川崎純夫さん、小寺良和さんと支援者の三上政美さんにお越しいただきました。
川崎さん、三上さんからは、山本さんと小寺さんの創作の様子や日々のエピソードをご紹介いただきましたが、まさにお二人の創作の歩みは、支援者の方と共に歩んできた歴史であり、川崎さんや三上さんが、山本さん、小寺さんを尊重し信じてこられたことが、お二人の創作の基盤にあることを感じました。山本さんと川崎さん、小寺さんと三上さんの歴史と信頼関係の深さから、多くのことを学んだ時間でした。
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2日間のお話を通して、タイトルのとおり、障害のある人の表現活動は、周囲の人とのコミュニケーションそのものになるということを強く感じたトークイベントでした。