今回のあいちアール・ブリュット障害者アーツ展では、9月16日(土)、17日(日)と2日間にわたり、「福祉とアートのあいだ」と題して、トークイベントを開催しました。
1日目の講師は、美術評論家の三頭谷鷹史さんと愛知アート・コレクティブの鈴木敏春さん。海外での作品を参照しつつ、「アール・ブリュット」という言葉について紹介いただいたうえで、日本での取組を振り返りました。日本では、山下清が在籍した八幡学園(千葉県)や近江学園(滋賀県)での取組に代表されるように、作品制作は、福祉現場での職業訓練の一環として行われており、日本の「アール・ブリュット」の出発点が福祉の現場にあったことが紹介されました。そして、障害のある方の成長や成熟が作品に現れてくる、との指摘もあり、その点にも福祉現場での取組の意味があるのではないかとのお話もありました。
また、愛知県においても、山本良比古さんや岡崎市の藤花荘での活動など、地域に根付いた取組の積み重ねがあることも指摘いただき、この「あいちアール・ブリュット展」も、皆さんの活動の積み重ねの上にあるのだということを実感しました。
2日目は、愛知県を中心に福祉現場でアート活動に取り組まれているスタッフの方にお越しいただきました。まつさかチャレンジドプレイス希望の園(三重県松阪市)の村林さん、名東福祉会(名古屋市)の三上さんとベテランのお二人に加え、サンフレンド(小牧市)の澤田さん、ポパイ(名古屋市)の餅木さんと若いスタッフの皆さんにもご参加いただき、それぞれの現場での取組を紹介いただきました。
いずれの施設・事業所においても、利用者さんに寄り添うことを一番に、地域にも開かれた活動が展開されています。また、創作活動が単に作品を作るだけでなく、スタッフと一緒に作ること、制作の過程やその作品そのものが、利用者さんとスタッフさんのコミュニケーションの手段となっていることも、具体的な場面を交えつつ、お話しいただきました。
台風の影響も心配されましたが、2日間にわたるトークイベントでは、実際の作品に囲まれながら、改めて「アール・ブリュット」、そしてゲイジュツのチカラについて考えることができました。講師の皆さん、ありがとうございました。